Alden V-tipをArchに置き続ける理由
Alden 54411 Algonquin ox の入荷に伴い以下についてブログを書きました。
・” Edward Lyman Munson “
・” 40’s USN SERVICE SHOES “
・” OLD COLONY boot and shoe company “
・”Alden V-tipをArchに置き続ける理由“

モディファイドラストの中で圧倒的な人気を誇るAlgonquin ox 通称 “V-tip”。
Aldenには13型以上のラスト(木型)が存在し、
アメリカ本国では、バリーラストが基本的なラストとされる中で
何故Archではモディファイドラスト、延いてはV-tipを展開し続けているのか。

その理由にはモディファイドラストが誕生した歴史も含まれています。
モディファイドラストの話になると少々長くなってしまうので、掻い摘んでお話ししたいのですが、
それでも多少長文になる気がします…(笑)
それぐらい歴史があり、良いものなのだと確信に至るのだと私は思います。
前置きはここまでに、

モディファイドラスト誕生について触れていくと、
” Edward Lyman Munson “
” 40’s USN SERVICE SHOES “
” OLD COLONY boot and shoe company “
上記が大きく関わっていることがわかります。

” Edward Lyman Munson “
上の写真の人物はEdward Lyman Munson、マンソン博士と言われる方で、
米国陸軍学校で教授を務めた人物です。
マンソン博士は後世の木型について多大なる影響を及ぼした人物でもあります。
1900年代初頭に、戦争から帰る兵士達の多くが疲労骨折している事から打開する為、人種を問わない約2000人の兵士の足を測定しその計測結果から
誰もが疲れ難い木型を4年の歳月をかけて製作しました。
その名を冠し、”マンソンラスト“と呼ばれています。

現代のように、機械システム等の技術が発展していないであろう当時に、
2000人の兵士を測定することはもちろん、何度も作ったであろうサンプルの木型を完成に至らせるのにも相当の根気と熱意が必要だったはずです。
他が為にと燃ゆる信条を胸に、妥協を許さなかった作品だからこそ100年を越える歳月を経てもそのラストが用いられるのには誰もが納得せざるを得ないはずです。

そのマンソンラストと40’s SERVICE SHOESには大きな関わりがあります。
” 40’s USN SERVICE SHOES “
1940年代初頭、第二次世界大戦中で世界で1番、戦争に国家予算をかけていたと言われるアメリカにおいて、今でいう名品が多く誕生しています。
その中の一つ “40’s SERVICE SHOES “。
前述のマンソンラストをベースに米海軍の式典・祭典用にドレスアップされた木型 ” USN ラスト ” を製作し、
米国の名立たるシューズメーカーにその設計図と国家予算を掛け製作させました。
1950年代以上のサービスシューズに比べて1940年代のサービスシューズは革の質と縫製の細かさが段違いに高品質であることがわかります。
何故ここでサービスシューズの話が出たのかは、
冒頭に記述しております、Alden社がモディファイドラストを製作する上で、とあるメーカーと共同で開発しとことに起因します。

” OLD COLONY boot and shoe company “
old colony社(オールドコロニー)についての文献は極少数で情報もあまりないのですが、
少ない情報の中で、オールドコロニー社は当時 オーソペディックシューズ(治療や運動機能の補助を目的とした靴)を製作していたことがわかります。
前述の40’s サービスシューズの製作をしていた一社でもあります。
Aldenは医療矯正靴に力を入れる意向を1900年代半ばに示し、オールドコロニー社を買収しました。
元々オーソぺディックシューズとして用いられていた、オールドコロニー社のラスト、
これを”モディファイドラスト“と呼びます。
これを元に、オールドコロニー社を買収したAlden社がオールドコロニー社の洗練された技術と共に、
より良いものになるようにと改良(モディファイド)を重ねて誕生したのが、
“NEW MODIFIED LAST“ 通称モディファイドラストであり、現在Aldenで製作されているV-tipを含むモディファイドラストです。

非常に長くなりましたが、
ただ履きやすいだけではない歴史的根拠から美しさ、所謂”機能美”が備わっていることがわかります。
このモディファイドラストを広めたのが、ANATOMICAの創設者”PIERRE FOURNIER”。
ANATOMICAの前身、HEMISPHERE(エミスフィール)時代にジャン セバスチャンとピエール フルニエが1980年代にHEMISPHEREでモディファイドラストのV-tipを展開し始めました。
札幌、京都にANATOMICAを展開するArchにとって、
モディファイドラストが主流となるのに時間は要しませんでした。
数十足以上のAldenを所有する代表の山内も、モディファイドラストが一番履き心地も含め気に入っており、その八割がモディファイドラストだと言っていました。

Alden V-tipをArchに置き続ける理由
モディファイドラストが製作され、初めに誕生したのがAlgonquin ox. 通称V-tipです。
このV-tipはU-tipから 派生したものであり、U-tipの起源は諸説ありますが、漁師の間で履かれていたり、狩猟やインフラストラクチャ プロジェクトの労働者達が履いていたなど、
フィールドスポーツやワークとして用いられていた起源があります。
これを、人の足を模った美しいフォルムのモディファイドラストに用いているという掛け合わせがいかにもArchが好むものであり、
M-47や5ポケットパンツ、チノパンにグレートラウザーの基本的なパンツのどれに合わせても歴史的背景のもと、合わせ方にストーリーが生まれること。
そして、アメリカ靴でありながらフランスの伝説的セレクトショップHEMISPHEREから広まったこの靴は、フレンチアメリカンの代表する靴とも言える事が、
V-tipをArchに置き続ける理由でもあると私は思います。

そう考えると、このV-tipにはカーフレザーの相性が抜群。
それについては次回のブログにて…(笑)
Arch 柳田