一生物のコート
僕はコートが好きです。
纏ったときの、他の何にも代え難い高揚感。
気がつけば毎シーズン増えているような…
ここまでコートに心を揺さぶられるようになったのは、ある1着を購入して以来だと感じています。
そのコートこそANATOMICAのSingle raglan Coat。
お客さん時代に購入しましたが、まさか自分がそれを販売する側にいるとは当時は思いもせず、何とも感慨深く特に思入れのあるコートです。
当店でも定番かつお馴染みのコートですが、着用者各々の感想と一緒に改めて良さを布教させて下さい。
パッと見でも分かるほど仕立ての良さが滲み出ているこのコート、いくつかの特徴があります。
まずは名前の通り袖付けが1枚袖になっていること。
2枚袖や3枚袖にもそれぞれ良さがありますが、決定的に違うのは重ね着をした際にも広く作られたアームホールのおかげで肩がストンと綺麗に落ちてくれます。
次にシルエット。
贅沢に大量の生地を使用することで生まれるドレープ感、どの角度から見てもエレガントなAラインシルエットを生む圧倒的なパターンの良さは、立ち姿でさえも優美です。
アナトミカの創設者であるピエール・フルニエ氏のポリシーである
「大股で歩いた時にコートは綺麗になびかなくてはいけない」
という言葉通り、立って、歩くだけで絵になってしまいます。
久々に登場したCovert Clothを使用した1着。
あまり聞き馴染みのない素材かと思いますが、その出で立ちはクラシックなものです。
英国貴族たちの嗜みである狩猟や乗馬の際に着用されていた衣類に用いられていた生地。
艶やかで上品かつ存在感のある見た目にも関わらず、LOVATという色味が相まってかどこか粗野な雰囲気も持ち合わせています。
このモデルに限らず、ポケットは貫通式というクラシックな仕様。
本来紳士のレインコートとしての役割を担っていたバルマカーンコート。
コートを脱がなくてもジャケットやパンツのポケットに直接アクセスできるのは現代においても機能美と呼べるのではないでしょうか?
(小見野)
今回のこのコートを始めて着たときに、古着好きなパリの学生が親のBurberrysのコートを貰って適当に羽織っているようなストーリーが浮かんでしまったので、試してみない訳にはいきませんでした(笑)
上品ながらも良い意味での土臭さが共存しており、背景に英国も感じるCovert cloth。
Single raglan シリーズの中でも、特にあまり気負わずにザックリと羽織れるそんな1着です。
ナードな雰囲気の若者や、白髪が似合う年を迎えた方に個人的オススメです。
昨年復活を果たしたSingle raglan Ⅳ。
ローデンクロスと呼ばれる圧縮ウールで製作された今回の1着。
肉厚で重厚感があり、1月〜3月の極寒時期でも暖かいです。
チャコールカラーのためインナーに発色の良いセーターや、モールスキンやコーデュロイなどの厚みのあるコットンウェアやウールジャケットとのレイヤードも楽しめます。
先程のCovert Clothのものと同様にリバーシブルではなく1面のみなので、フロントは比翼になっており、より引き締まります。
(柳田)
OUTILのブラックのワークジャケットにKLASICAのトラウザーを合わせ、ヨーロッパのワーカーらしい装いに、上品なチャコールカラーのSINGLE RAGLAN Ⅳを合わせることで、どこかトラッドさを帯びた雰囲気を意識しました。
今回はスカーフを合わせましたが、シャツにネクタイでアメトラっぽい首元も試してみたいです。
最後はお馴染みのSingle raglan Ⅱ。
しかし、今年はなんと札幌別注で製作して頂きました。
大きなチェック柄が目を惹く表地には、英国の老舗生地メーカー F社のツイードが使用されており、圧巻の美しさです。
裏地には英国のB社が特許を持っていたことでも知られる、コットンギャバジンを使用。
コットンの糸を超高密度で織り上げることで生まれる撥水性は、多少の雨なら傘いらずで、本来のレインコートとしての役割を果たします。
こちらのSingle raglan Ⅱはリバーシブル仕様のため襟の仕上げ方が他のモデルと違います。
他のモデルでは、襟に綺麗な折り目をつけるため縫合後にプレスしてしまいますが、こちらは逆面で着用する際にも自然な襟立ちを保つため手作業で襟を取り付けています。
また写真では写っていませんが、縮率の全く違う2つの生地をぴったりと合わせるため非常に高度な縫製技術を用います。
(鈴木)
このコートの美しさを際立たせるために、あえて無骨なビーチクロスベスト、米軍の軍パン、サービスシューズを合わせました。
アメリカンな合わせながらも、このコートを羽織る事でヨーロッパの雰囲気がプラスされます。
アメリカ物に傾倒している方にも試して頂きたいコートです。
いつも以上に長々と語ってしまいましたが、正直まだまだ紹介したいことが山程あるこのコート。
決して安いものでは無いです。
しかしだからこそ安価なアウターを2〜3年で買い替え続けるよりも、高くても本当に良いものを10年、20年着ることの方がカッコいいと感じます。
北海道の厳しい冬を一緒に乗り越え、自分と一緒に歳を取る相棒をぜひ早いうちに見つけてスタイルを確立して頂きたいです。
そんな相棒たるかを実際に袖を通して、話を聞いて検討して頂きたいです。
Arch STELLAR PLACE 小見野