THE INOUE BROTHERS Arch Ex.
“Style can’t be mass-produced”
THE INOUE BROTERSのプロダクツに初めて触れたのは、Archに入社してからでした。
入社してすぐに、運よく井上兄弟のお二人が札幌にいらして勉強会を開いてくださり、直接お話を聞くことが出来ました。
THE INOUE BROTHERSが、掲げるコンセプトを初めて聞いた時、強烈な衝撃を受けたの今でも覚えています。
“Style can’t be mass-produced…(スタイルは、大量生産出来ない)“
というメッセージは、デンマークで生まれ育った日系二世兄弟によるブランド「ザ・イノウエ・ブラザーズ」のコンセプト。
これは、1970年代後半のニューヨークのスラム街で、グラフィティーアーティストたちが当時の商業的なアートシーンに対する象徴的なアンチテーゼとして、よく使っていた言葉だそうです。
『本当のスタイル、本当のカッコよさは、大量生産のなかからは決して生まれてこない。』
作り手の顔が見えて、ものづくりに対する思いとスタイルを感じることができる洋服を品揃えしている僕らにとって、すごく共感を覚える言葉です。
ファストファッションをはじめとするマスプロダクツ(大量生産品)は、新興国の労働者からの搾取で成り立っており、それは、兄弟がアンデスで出会った”アルパカ”を飼養に従事する牧畜民も同じでした。
彼らは、仲買人によって公正な市場価格以下の値でアルパカの毛を引き渡すことが強いられており、そのことが貧困とアルパカ繊維のクオリティ悪化へと繋がっていたそうです。
しかも、仲買人が存在することによって、アルパカ原毛の価格が20%近く上昇してしまい、それは当然エンドユーザーが手にする時の価格にも反映されるのです。
そこで、兄弟が取り組んだのが中間マージンを極力カットし、消費者にはよりリーズナブルな価格で商品を提供し、生産者にはより多くの利益をもたらす”ダイレクトトレード”だったのです。
『どこかで、誰かが、苦しまなければならないビジネスなんてもういらない』
このビジネスを始めたときから、いちばんに優先すべきなのはアンデスで生きる人たちへの利益還元と決めていたというイノウエブラザーズ。
そして彼らは、アンデスで出会ったアルパカの素晴らしさを広め、現地の人の暮らしを向上させるために「世界一」だと誇れるアルパカセーターを試行錯誤の末に作り上げました。
アンデスで出会ったアルパカの素晴らしさを広め、現地の人の暮らしを向上させるために活動している井上兄弟。
『つくる人も、売る人も、それを着る人も、みんなが幸せな気持ちになれるのが、本当の意味でのラグジュアリーだ。』
勉強会後、その日に購入を決めたのは、言うまでもなく…
当時実際に購入したのが、ロイヤルアルパカのブラックハイゲージのクルーネックとタートルネック、そしてベビーアルパカのワッフルのクルーネックでした。
理由は単純なのですが、代表の山内がよく着ていてそれが格好良かったから!
今では既にどちらも廃盤となってしまいましたが…。
アルパカの生息するアンデス山脈という土地は、標高5000メートルを超える高地で、昼夜の寒暖差が40℃以上になることがあります。
生物にとって極めて過酷な環境。
それに順応しようと、アルパカの毛は内部の空洞によって暖かい空気を溜めることが出来、保温性にとても優れております。
さらに、一定以上熱くなると毛が開くという作用があり、余計な熱を発散する性質があります。
その為、軽量でありながら防寒性に優れ、気温の変化にも対応できる機能を備えているのです。
外は寒くても地下などの屋内に入ると、暖房が効いていて意外と暑かったりする経験をされた方も多いのではないでしょうか。
気温が低い時は、空気を取り込み保温し、気温が高い時は空気を出し熱を逃す。
自然のサーマル効果を持つウールを使用している為、THE INOUE BROTHERSのニットも同様の効果を発揮してくれます。
“ROYAL ALPACA”
アルパカ素材の中でも、”ROYAL ALPACA”は最高ランクに位置付けられており、唯一井上兄弟が独占的にこの極上のウールを使用出来ているのです。
アルパカのニット糸は、その繊維の太さを表す単位”マイクロン”(1ミリメートルの1000分の1。人間の髪の毛は約70〜80マイクロン)で分類されています。
数字が小さければ小さいほど細くしなやかで、市場価値が高くなり、THE INOUE BROTHERSではハイゲージニットに使用されている最高級糸の”ロイヤルアルパカ”は18.5〜19.0マイクロンほどで、それに次ぐのが”ベビーアルパカ”となります。
目先に囚われない人の繋がりをもって、織り成されてきたROYAL ALPACAは物価高騰等の理由からTHE INOUE BROTHERSの流儀から外れてしまうという考えのもと、ROYAL ALPACAは、一度廃盤となりました。
しかし、今回山内のリクエストで、Archで展開したいという思いから特別に製作していただきました。
Crew Neck
Turtle Neck
そんな特別な”ROYAL ALPACA”を使用し、製作を依頼したモデルは、ハイゲージのクルーネックとタートルネック。
まさに当時一番最初に自分が購入していた2つのモデルです。
実際に着ていただくとわかるのですが、着るととろみのある肌触り。
太い繊維であるアルパカのニットには、チクチクするイメージをお持ちの方もいらっしゃると思います。
ロイヤルアルパカを使用することでその悩みは解消され、肌が弱い方でも問題なく愛用されています。
縫い合わせている箇所には、THE INOUE BROTHERSのアイコン的なディテールであるレザーパッチを施してます。
補強も兼ねた意味のあるディテールにも惹かれますね。
袖はターンバック(折り返し)仕様のため、ご自身のちょうど良い箇所にフィットさせられます。
ベーシックなアイテム故にその着こなしの幅は、とどまることを知りません。
派手さはないですが、着心地といい、その汎用性といい
つい着てしまう、手元からなくなったら困る洋服。
ぜひこの機会にTHE INOUE BROTHERSが生み出すプロダクツに触れてみてください。
Arch Sapporo 荒